しかしここ最近、四教科のなかでも特に国語が苦手だという生徒が増えています。成績表のグラフを見ましてもそこの部分だけがボコッと凹んでいるのです。かつて国語は女の子の得意科目でしたが、今は学年性別を問わず苦手意識をもつお子様が目立ち始めています。
「何とかしなくては」と思い、家庭でできることとしてまず思い浮かぶのは「漢字、語句の練習」。これ自体は必要不可欠な学習ですが、国語の成績を飛躍的に伸ばすための根本的解決策にはなりません。なぜなら、それらの合計点はテストの得点全体の20%以下にすぎないからです。つまり、得点のほとんどを占める文章題を克服しない限り向上は望めないということなのです。今回は「文章題の克服法」についてのさわりの部分だけお伝えします。
では、その文章題の克服法について考えてみましょう。手っ取り早く成績をあげようとしてトリッキーなテクニックに頼ろうとする向きもありますが、難解な問題(文章)であればこそ原点に立ち考えてみる必要があります。その方が解決が早まります。
文章は一つ一つの文から成り立っています。
文は言葉の組み合わせで成り立っています。
言葉は文字で成り立っています。
ここから何が見えてくるでしょう?文字(ひらがな・かたかなレベル)は理解していますね。得点できない生徒の最初の躓きは言葉の意味を知らないこと。意味がわかっている言葉が続くうちは同時に文もスムーズに読めるので順調に進みますが、次の躓きは新たに理解不能な文(言葉)に出会ってしまい、そこで立ち往生しパニックになってしまうこと。その結果時間切れや集中力、意欲の欠如を招き、問題を読む気力すら失った状態のまま試験が終わる。これが今までの「失敗パターン」ではなかったでしょうか?では、どうすればよいか?簡単な話です。以下のことさえ克服すればよいのです。
(1)言葉の知識を豊富にする。仮にわからない言葉に出会っても前後の内容から意味を類推する冷静な判断力をもつ。
(2)難しいと思える文に出会ったときこそパニックにならず落ち着いて内容の理解に努める。
つまり、家庭では「意味ノート」を作り、わからない言葉に出会うたびにこまめに辞書を引く習慣をつけること。そして、どんなときでも動揺しないよう心を鍛えること。この2点が大切です。問題はそれが実行できるか否かです。
飛ばし読みをしない
次の躓きの原因は何か?それは「文章の飛ばし読み」です。「大事な試験中にそんなことするはずがない」とお思いかもしれませんが、実は無意識のうちにやってしまっていることが多いのです。特に○×式の正誤問題をよく外す生徒にその傾向が見られます。失敗の原因は飛ばし読みをした結果、書かれてある内容が目に入っておらず、逆に書かれていない内容を自分の判断で勝手に推測し(悪く言えばヤマカン)、選んでしまうからです。よく「私は読書が好きなのに国語の成績が悪い」と悩む生徒がいますが、それは飛ばし読みが許される「趣味の読書」と文章を丁寧に読み進めなければいけない「試験中における文章の読解」を混同しているからです。それぞれの読み方が根本的に違うことを認識してください。
文字になった内容のみで考える
これも読書好きな生徒に見られる傾向ですが、「文字になった内容から逸脱して、自分の空想を広げ、それを基準にして解答を作成する」。この解き方は是非避けてください。
よく「行間を読む」ことの重要性を説く方がいますが、小学生がこれを実行すると必ずといっていいほど文章の内容(テーマ)から外れた発想をしてしまいます。まず、文字になっている内容のみで考える習慣をつけましょう。答えの根拠・証拠は必ず文中の文字のなかに存在していると思ってください。
そもそも試験科目の国語で何が求められているかといえば「受験生が文章を正しく理解できているかどうか、また、設問できかれた通り正確に答えられたかどうか」であり、「想像力の有無」を求めているわけではありません。出題者の意図がわかっていればそれに沿った解き方をすることが大切です。
設問できかれた通り答える
1~3までのことができるようになれば、次に克服すべきは「設問の読み方」です。
文章の読解能力はあるのに点数が伸びない生徒、記述問題を仕上げたのに部分点すらもらえない生徒、算数の文章題が苦手な生徒はこの「設問の読み方」に問題があるからかもしれません。
先程も申しましたが出題者は「設問できかれた通り正確に答えられたかどうか」も求めていますが、大半の受験生は文章読解にばかり気を奪われ、その分設問はおざなりになってしまうことが多いようです、が、きかれたことと全くちがった方向の答え(とんちんかんな答え)を書いても点数にならないことは誰でもわかることです。
何をきかれているかについて落ち着いてそして確実に把握しましょう。そしてきかれた部分に線を付け、それに沿ったかたちでの解答を仕上げることを意識しましょう。きかれた通りに正しく答えることは(読解もそうですが)大人になっても必要な能力です。今からそれを養っていきましょう。
大雑把な性格を直す
1~4に必要な能力がわかりますか?それは決して「国語の能力」という抽象的なものではなく、先程まで頻繁に出てきた「丁寧さ」「落ち着き」です。
逆を言えば「大雑把で冷静さに欠く性格」を改善しなければなりません。国語のできないお子様は間違いなくそういった性格を持ち合わせています。「三つ子の魂百まで」というくらいですから性格はなかなか変えられるものではありませんが、受験成功という大目標があれば当然克服に努めるべきです。厳しい話ですが、国語能力の低下の原因は家庭におけるお子様との接し方に原因があることがほとんどですので、その改善も家庭で行うべきものなのです。
まず、国語に限らず日常のこまごましたことに対しても意識的に丁寧に、そして家庭での会話も「指示語会話」で済ませるのではなく、一語一語を丁寧に話し、聞き、読み、話す。この習慣を身につけさせてください。「性格改善はご家庭で、学力向上は塾で」と役割を分担し、三位一体で頑張っていきましょう。